2026-27シーズンからBリーグは「Bプレミア」へと移行する。アリーナ基準や収益要件、サラリーキャップ導入など、プロリーグとしての水準を引き上げた新たなステージの幕開けだ。そして、2025-26シーズンで10年間のBリーグの歴史に一区切りがつくこととなる。 そこで、Bリーグ10年間で各チームのロスターの変化を振り返ろうと思い、今回は筆を執った次第だ。
今回取り上げるのは、Bリーグにおいて圧倒的な「常勝軍団」のカルチャーを築き上げたアルバルク東京。
Bリーグ開幕からの5年間を振り返ると、彼らがいかにしてヨーロッパの最先端の戦術を取り入れ、リーグ全体のレベルを一段階も二段階も引き上げたかが見えてくる。「EXCEED」「AHEAD」といったスローガンのもと、他を寄せ付けない連覇を果たした黄金期の歩みは必見だ。 それでは、2016-17シーズンの開幕から2020-21シーズンまでの5年間のロスターとシーズン成績、サマリーを振り返ってみよう。
(文字数制限のため、前半と後半の5年区切りになることをご容赦ください)
2016-17シーズン
成績:44勝16敗(勝率.733)/東地区2位(リーグ全体3位) ※CSベスト4
ヘッドコーチ:伊藤拓摩
ロスター詳細
| No | 選手名 | 身長/体重 | 前所属先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2 | ディアンテ・ギャレット | 193cm/86kg | マッカビ・アシュドッド | オールスター出場 |
| 7 | 正中 岳城 | 180cm/78kg | トヨタ自動車(継続) | 初代キャプテン |
| 9 | 伊藤 大司 | 175cm/75kg | トヨタ自動車(継続) | - |
| 10 | ザック・バランスキー | 193cm/93kg | トヨタ自動車(継続) | - |
| 13 | 菊地 祥平 | 191cm/91kg | トヨタ自動車(継続) | - |
| 15 | 竹内 譲次 | 207cm/98kg | 日立サンロッカーズ東京 | - |
| 16 | 松井 啓十郎 | 188cm/85kg | トヨタ自動車(継続) | - |
| 23 | ジェフ・エアーズ | 206cm/109kg | ロサンゼルス・ディーフェンダーズ | 2017年3月途中加入 |
| 24 | 田中 大貴 | 192cm/93kg | トヨタ自動車(継続) | レギュラーシーズンベスト5 |
| 35 | トレント・プレイステッド | 211cm/111kg | ネプトゥーナス(リトアニア) | 2016年11月退団 |
| 42 | トロイ・ギレンウォーター | 205cm/111kg | 陝西信達(中国) | 2016年12月加入→翌年2月退団 |
| 44 | アンドリュー・ネイミック | 209cm/111kg | リンク栃木ブレックス | 2016年9月短期契約・その後退団 |
| 88 | 二ノ宮 康平 | 173cm/70kg | トヨタ自動車(継続) | - |
NBL時代の名門「トヨタ自動車アルバルク東京」としてBリーグ元年に臨んだシーズン。記念すべきBリーグ開幕戦(代々木第一体育館)で琉球ゴールデンキングスと対戦し、日本中から大きな注目を集める中で歴史的勝利を飾った。
伊藤拓摩HCのもと、チームの絶対的エースである田中大貴を中心に、インサイドにはサンロッカーズから移籍してきた日本代表の竹内譲次が加入。そして、NBA経験を持つディアンテ・ギャレットが圧倒的な個人技でリーグを席巻した。シーズン中は外国籍選手の入れ替わりが激しく、開幕時のプレイステッドからギレンウォーター、最終的にNBA優勝経験のあるジェフ・エアーズが合流するというスクラップ&ビルドがあった。
レギュラーシーズンは44勝16敗と高勝率を残したが、東地区は栃木、千葉がひしめく激戦区であり2位通過。CSではセミファイナルで川崎ブレイブサンダースとの死闘の末に敗れ初代王者の夢は潰えたが、強豪としての地力は疑いようのないシーズンだった。
2017-18シーズン
成績:44勝16敗(勝率.733)/東地区2位(リーグ全体3位) ※Bリーグ初優勝
ヘッドコーチ:ルカ・パヴィチェヴィッチ
ロスター詳細
| No | 選手名 | 身長/体重 | 前所属先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 小島 元基 | 181cm/82kg | 京都ハンナリーズ | - |
| 3 | 安藤 誓哉 | 181cm/80kg | 秋田ノーザンハピネッツ | 期限付き移籍(翌年完全移籍) |
| 6 | 馬場 雄大 | 198cm/90kg | 筑波大学 | 新人王受賞 |
| 7 | 正中 岳城 | 180cm/78kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 9 | ブレンダン・レーン | 206cm/101kg | s.Oliver Würzburg(独) | - |
| 10 | ザック・バランスキー | 193cm/93kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 13 | 菊地 祥平 | 191cm/91kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 15 | 竹内 譲次 | 207cm/98kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 24 | 田中 大貴 | 192cm/93kg | アルバルク東京(継続) | レギュラーシーズンベスト5 / CSファイナルMVP |
| 31 | ジャワッド・ウィリアムズ | 204cm/101kg | パラナッセ(伊) | - |
| 53 | アレックス・カーク | 211cm/114kg | アナドル・エフェス(トルコ) | - |
アルバルク東京が「完全体」へと変貌を遂げたターニングポイントの年。名将ルカ・パヴィチェヴィッチを新HCに招聘し、ヨーロピアンスタイルの緻密なピック&ロールと、一切の妥協を許さない激しいプレッシャーディフェンスをチームに徹底させた。
大型補強として、京都から小島元基、秋田から司令塔の安藤誓哉、さらには筑波大在学中であった日本バスケ界の至宝・馬場雄大をプロ契約で獲得。インサイドには攻守の絶対的要となるアレックス・カークが加入した。前年までの「個の力」に頼るスタイルから、コート上の5人が機械のように連動する「組織力」への見事なトランジションを果たした。
CSではその組織力がさらに研ぎ澄まされ、横浜アリーナで行われたファイナルで千葉ジェッツを撃破。「EXCEED(限界突破)」のスローガンを見事に体現し、悲願のBリーグ初優勝を成し遂げた。
2018-19シーズン
成績:44勝16敗(勝率.733)/東地区3位(リーグ全体3位) ※Bリーグ連覇(2度目の優勝)
ヘッドコーチ:ルカ・パヴィチェヴィッチ
ロスター詳細
| No | 選手名 | 身長/体重 | 前所属先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 小島 元基 | 181cm/82kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 3 | 安藤 誓哉 | 181cm/80kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 5 | ケビン・ジョーンズ | 203cm/114kg | サスキ・バスコニア(西) | 2019年3月途中加入 |
| 6 | 馬場 雄大 | 198cm/90kg | アルバルク東京(継続) | CSファイナルMVP |
| 7 | 正中 岳城 | 180cm/78kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 9 | ミラン・マチュバン | 206cm/107kg | バイエルン・ミュンヘン(独) | 開幕前に負傷しシーズン全休 |
| 10 | ザック・バランスキー | 193cm/93kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 13 | 菊地 祥平 | 191cm/91kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 15 | 竹内 譲次 | 207cm/98kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 22 | ミルコ・ビエリツァ | 207cm/104kg | サラゴサ(西) | 2019年3月に退団 |
| 24 | 田中 大貴 | 192cm/93kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 31 | ジャワッド・ウィリアムズ | 204cm/101kg | アルバルク東京 | マチュバン離脱による短期契約(9〜11月) |
| 53 | アレックス・カーク | 211cm/114kg | アルバルク東京(継続) | - |
Bリーグ史上初となる「連覇」への挑戦となったシーズン。開幕前にセルビア代表のミラン・マチュバンを獲得するも、プレシーズンで大怪我を負い全休となる大アクシデントに見舞われる。急遽ジャワッド・ウィリアムズと短期契約を結び、その後ミルコ・ビエリツァ、そして3月にはケビン・ジョーンズへと外国籍選手が目まぐるしく入れ替わったが、ルカHCのシステムは全く揺らがなかった。
この年の東地区は千葉ジェッツ、栃木ブレックス、そしてアルバルク東京の3強が信じられないほどの勝率争いを繰り広げ、A東京は地区3位(ワイルドカード)でのCS進出となった。だが、アウェーで戦い抜くCSに入るとその「ルカ・アルバルク」の勝負強さが真骨頂を発揮する。強豪たちを次々と粉砕し、ファイナルでは因縁の千葉ジェッツと再び激突。馬場雄大の驚異的なトランジションとダンクが爆発し、見事にBリーグ初の連覇を達成。「常勝アルバルク」の地位を確固たるものにした。
2019-20シーズン
成績:32勝9敗(勝率.780)/東地区1位(リーグ全体1位) ※新型コロナによりシーズン途中終了
ヘッドコーチ:ルカ・パヴィチェヴィッチ
ロスター詳細
| No | 選手名 | 身長/体重 | 前所属先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 小島 元基 | 181cm/82kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 3 | 安藤 誓哉 | 181cm/80kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 5 | ケビン・ジョーンズ | 203cm/114kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 7 | 正中 岳城 | 180cm/78kg | アルバルク東京(継続) | このシーズン限りで現役引退 |
| 9 | ミラン・マチュバン | 206cm/107kg | アルバルク東京(継続) | 怪我から復帰 / シーズン後引退 |
| 10 | ザック・バランスキー | 193cm/93kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 11 | 小酒部 泰暉 | 187cm/84kg | 専修大学 | 12月加入(特別指定選手) |
| 13 | 菊地 祥平 | 191cm/91kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 15 | 竹内 譲次 | 207cm/98kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 21 | 平岩 玄 | 200cm/105kg | 東海大学 | 12月加入(特別指定選手) |
| 24 | 田中 大貴 | 192cm/93kg | アルバルク東京(継続) | レギュラーシーズンMVP |
| 26 | 笹倉 怜寿 | 187cm/80kg | 東海大学 | 12月加入(特別指定選手) |
| 53 | アレックス・カーク | 211cm/114kg | アルバルク東京(継続) | - |
前年の優勝の立役者の一人であった馬場雄大が、NBAへの挑戦(Gリーグ参戦)のためシーズン開幕直前にチームを離脱。機動力を失ったチームは戦術のマイナーチェンジを迫られたが、ここで真価を発揮したのが田中大貴だった。彼は本格的にポイントガードとしてオフェンスのタクトを振るい、ゲームを完全に掌握した。
そして、このシーズンを語る上で絶対に外せないのが、開幕直前の9月にタイで開催された国際大会『FIBAアジアチャンピオンズカップ2019』での快挙だ。日本代表として出場したアルバルク東京は、中東や東アジアの並み居る強豪クラブを次々と撃破。決勝ではレバノンのアル・リアディを破り、見事に日本クラブ史上初となる「アジア王者」の称号を手にした。
アジア王者としての凱旋を果たした国内リーグ戦でも、その強さは健在だった。前年の大怪我から復帰したマチュバンが賢いプレーで潤滑油となり、特別指定選手として加入した小酒部泰暉がルーキー離れしたポテンシャルを発揮。終わってみれば32勝9敗と東地区首位(リーグ全体首位)を独走していた。
新型コロナウイルスの影響によりシーズン途中で打ち切りとなり、幻の「3連覇」への道は途絶えたものの、田中大貴が見事にレギュラーシーズンMVPを受賞。また、クラブの黎明期から精神的支柱であった正中岳城がこのシーズン限りで現役を引退した。チームとしての完成度と強さは、国内のみならずアジアの舞台でも証明された。
2020-21シーズン
成績:32勝24敗(勝率.571)/東地区6位(リーグ全体9位) ※CS進出ならず
ヘッドコーチ:ルカ・パヴィチェヴィッチ
ロスター詳細
| No | 選手名 | 身長/体重 | 前所属先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | デション・トーマス | 201cm/104kg | パナシナイコス(ギリシャ) | - |
| 1 | 小島 元基 | 181cm/82kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 3 | 安藤 誓哉 | 181cm/80kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 5 | ケビン・ジョーンズ | 203cm/114kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 8 | 吉井 裕鷹 | 196cm/94kg | 大阪学院大学 | 1月加入(特別指定選手) |
| 10 | ザック・バランスキー | 193cm/93kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 11 | 小酒部 泰暉 | 187cm/84kg | アルバルク東京(継続) | プロ契約へ移行 |
| 13 | 菊地 祥平 | 191cm/91kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 15 | 竹内 譲次 | 207cm/98kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 21 | 平岩 玄 | 200cm/105kg | アルバルク東京(継続) | プロ契約へ移行 |
| 24 | 田中 大貴 | 192cm/93kg | アルバルク東京(継続) | - |
| 26 | 笹倉 怜寿 | 187cm/80kg | アルバルク東京(継続) | プロ契約へ移行 |
| 34 | カイル・バローン | 208cm/113kg | 越谷アルファーズ | カーク負傷に伴い1月より加入 |
| 53 | アレックス・カーク | 211cm/114kg | アルバルク東京(継続) | 怪我による長期離脱 |
コロナ禍でのレギュレーション変更や、各チームの戦力強化が進む中で迎えたシーズン。ユーロリーグでの実績十分なスコアラー、デション・トーマスを獲得し、さらなる高みを目指した。
しかし、絶対的な大黒柱であったアレックス・カークが腰の怪我により長期離脱を余儀なくされるなど、アクシデントが重なる苦しい展開に。急遽カイル・バローンを補強して穴埋めを図るも、ルカHCのディフェンスシステムにおいてカーク不在の影響はあまりにも大きかった。トーマスは個人の得点能力でチームを牽引し、小酒部泰暉や新たに合流した吉井裕鷹ら若手も奮闘したが、インサイドの守備力とピック&ロールの精度に綻びが見えた。さらに東地区は宇都宮、千葉、川崎、SR渋谷などがひしめく歴史的な「超激戦区」となり、熾烈な星の潰し合いが発生。最終的に32勝24敗と勝ち越しながらも、東地区6位(総合9位)に沈み、まさかのチャンピオンシップ進出を逃す結果となった。
長年インサイドを支えた竹内譲次や安藤誓哉がシーズン終了後に移籍するなど、常勝軍団にとって一つの時代の区切りを予感させるシーズンとなった。
■ 2016-17〜2020-21シーズン アルバルク東京 前半5年間の総括
Bリーグ開幕からの5年間において、アルバルク東京ほど「組織の完成度」と「勝者のメンタリティ」を体現したチームはいないだろう。
2017-18シーズンにルカ・パヴィチェヴィッチHCが就任すると、激しいプレッシャーディフェンスと、システマチックにルール化されたピック&ロールを軸とするヨーロピアンな戦術をチームに植え付けた。田中大貴というリーグ屈指の2WAYプレイヤーを中心に、安藤誓哉、馬場雄大、アレックス・カークらが完璧にピースとして噛み合い、Bリーグ史上初の「連覇」という偉業を達成した。
彼らの強さは、単なるタレントの集まりではなく、コート上の5人が同じ絵を描き、機械のように正確に遂行し続ける圧倒的な「規律」にあった。他チームからすれば、アルバルクのディフェンスを崩すことは至難の業であり、まさにリーグ全体が高く見上げる強大な壁として君臨した。そしてその規律と強さは、国内のみならずアジア全土をも席巻する。2019年にタイで開催された『FIBAアジアチャンピオンズカップ』において、日本クラブ史上初となるアジア制覇という偉業を成し遂げたのだ。Bリーグのレベルの高さを国際舞台で証明した彼らの功績は計り知れない。
2020-21シーズンは怪我やコロナ禍の余波もありCS進出を逃すという悔しい結果に終わったが、正中岳城、竹内譲次、安藤誓哉ら、この連覇とアジア制覇のカルチャーを築き上げたコアメンバーの戦いは、日本のバスケットボールファンに強烈なインパクトを残した。この前半の5年間は、Bリーグにおける戦術レベルを一気に引き上げた「アルバルク黄金期」として、歴史に深く刻まれている。
次回、2021-22シーズンからBリーグラストとなる2025-26シーズンを振り返る。
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